お散歩






今日はいつにもまして空が蒼いから

雪もやんでもうすぐ春だから

だから、

こんなにいいお天気なんですもん、外でお散歩しましょ?


あなたと一緒の時を過ごしたいから・・・・・





二人は静かな森の中に、少しだけまだ雪が根元に残る道を歩く。


森といっても閑散としていて、空からの明るい光がよくふりそそぐ、少し歩くと小高い丘があり、

サラサラと川が流れる音が聞こえる。

ここはよく二人が好んでお散歩に来る、お気に入りのスポット。


紫が少し先を元気よく、ぴょんぴょん跳ねるように、

その少し後ろを五右エ門が柔らかな表情で歩いていく。いつものお散歩風景。


不意に紫が口を開く。


「ね〜ぇ?五右エ門さま」

「ん?」

「手、つないでいいですか?」

「え?」

別にこんな事言うの、初めてじゃない。っていうか、もう何度も手をつないだ事なんてあるし。

それに、いつもはこんな事言う前にもう手を勝手にぎゅうってつないじゃうし。

でも、この人はいつも決まって顔を真っ赤にして、うつむいて、

「む、紫殿…、そ、その…、人が見てるやも…。」

「大丈夫!ここは私と五右エ門さま位しか知らないトコなんだから、それに、

私は人に見られても平気です!」

「いや、その…」

ぽりぽりと頭をかきながら、少し困ったような、あなたのそんな照れる仕草、大好き。

だから、もっと見たくて、ちょっとだけ意地悪したくなっちゃうの。

「いいじゃないですか、手ぐらい〜、じゃあ、腕組も?」

「腕?」

よけいに、かぁ、と顔が赤くなる五右エ門。

「五右エ門さまは〜、私の事、きらい?私は五右エ門さまの事だ〜いすき!」

「え?あ、い、あの、…」

「ねぇ!五右エ門様は?ねぇってば!?すき?」

「あ、そ、その…」

しどろもどろ、ちらちらと紫の顔を見ながら、ギクシャクと声にならない。

もう、五右エ門さまったら〜、照れちゃってかわいいんだから〜〜〜〜!!!!


こうなると面白くて仕方がない、


ふっと、紫はさっきまでの明るさを消し、いきなり目に涙をためて悲しげな表情をつくる。

「…、何よぅ…さっきから五右エ門さまったら何にも言ってくれないし、もしかして私の事、きらいなのですか?」

うるうるとかわいらしい瞳から今にも涙があふれんばかりの紫。

それを見てさらにギョッと驚く五右エ門。

「あ!いや、そ、そんな訳なかろう?拙者は、せ、拙者は…、、、、、む、紫殿のことを、す、す……」

ガシっと思わず紫の両肩をつかみ、五右エ門は必死に想いを伝えようとする。

両肩を捕まえられた事をいいことに、紫はさらに

「…、じゃ〜あ、チュウ、して?」

「ち、ちゅう!!???」

またまた破裂しそうな五右エ門はもう何を言っていいやら完全にノックアウトされていた。

「ね〜ぇ、五右エ門さまったら〜〜」

やだぁ〜、五右エ門さまったら固まっちゃって〜。もう、やっぱり私の方からじゃないと何にも出来ないんだから。


ふと、五右エ門は紫の肩から両手を離し、くるりと後ろを向き、はぁ、とため息をつく。

「…すまない、拙者は…、どうも、こう、あまりこういうのは苦手…、というか、その、ど、どういう風にすればいいか

どう言葉を言えばいいか、分からない。でも、紫殿のことは、決して嫌いでは…!」

紫に背を向けながらも、耳まで真っ赤にしながら、何とも情けない、といった感じで少しブルーが入ってしまった。


あら、少しやりすぎちゃったかな…?


五右エ門はこういうじゃれ合いというのが本当に照れてしまって苦手だった。

でも、だからといって、好きな相手にこういう態度でせまられてはどう対処をしていいか、分からない。

だから、自分の不甲斐なさをいつも情けないと五右エ門は溜め息混じりに落ち込んでしまう。



「…やだぁ〜、五右エ門さまったら、…、ごめんなさい、私が少し意地悪しすぎちゃいました。だって、あんまり

照れてるんですもん、かわいいから、もっと五右エ門さまの照れてるとこ、見たいなぁ…、なんて…」

えへっとかわいく笑う紫を見て、五右エ門は、


「…そんなに、拙者の態度が面白かったのですか?」

ちょっとだけ、五右エ門がムスッと、からかわれた、と言う感じなのだろうか、ちょっとだけ拗ねた感じになる。

「だって、五右エ門さま、いつもと違ってかわいいんですもん…」


かわいい、等と言われて余計にかぁ、と赤くなり、さらにムスッとした顔になる五右エ門。


あれ?

何だか今までに無いリアクション。


そして、その場からスタスタと歩きだしてしまった。

「あ!、五右エ門さま、やだ!ごめんなさい!だって、五右エ門さまったらいっつも私からじゃないと手だって

つないでくれないし…、ねぇ、怒っちゃったの?五右エ門さま、待って!?」

ちょっとだけ離れた距離を縮めようと、紫があわてて五右エ門の手を取ろうとした。


瞬間…


「…え?」

フッと五右エ門がいなくなってしまった。

ほんの一瞬の出来事。

「……やだ、五右エ門さま?…、ホントに怒っちゃったの?ねぇ!五右エ門さま、ドコ?」

急いであたりを見回すが、周りは木や草がおおい茂る静かな深い森。

空からはその高い木々たちの隙間から眩しくも柔らかい光が差し込む。

「五右エ門さま〜〜!謝るから許して〜〜〜!お願い〜〜〜〜!!!」

やだ、五右エ門さま、ホントに怒って帰っちゃったの?



私があんまり五右エ門さまを困らせてばっかりいるから、嫌になっちゃたの?

子供みたいだから、あきれちゃったの?



…、やだ、五右エ門さまに嫌われるなんてやだ…!

本気で少し泣きそうになりながら紫が五右エ門の名を叫ぶ。

だが、その声が消え、あたりは自然の静けさにシンと静まり返るばかり。

どうしよう…、怒らせちゃったよぉ、私、嫌われちゃったの?


「…五右エ門さま……」


どうしていいか分からず、ぽつりと名を呼ぶ。

瞬間、いきなり背後からふわりと暖かい、力強いものが紫を包み込む。

「きゃ!?」

思わず、目をつむり、体を硬くさせる。

だが、次の瞬間、フッと耳元で熱い息と声が紫をますます硬直させた。


「…お返しだ」

「!!?」


ぎゅうっと紫を抱きしめいたのもつかの間、

すぐにパッと離れて五右エ門はその場で思わずヘナヘナと座り込んでしまった紫を見る。


「…紫殿があんまり、拙者をからかうから、お返しでござる。」

少し意地悪く、五右エ門が紫に笑う。

「…んもぅ!本気で怒っちゃったかと思ったじゃないですか!」

紫は今にも泣きそうな、真っ赤な顔で五右エ門を睨む。

だって、いきなり後ろから抱きつくなんて卑怯よ!

さっき、五右エ門の熱い息がかかった耳を手にして、余計に顔を真っ赤にする。

「驚かしすぎたかな?」

「……、だって、いっつも私からじゃないと手だってつないでくれないんだもん!五右エ門さまの意地悪!」

ぷいっと横を向かれてしまった五右エ門は、そんな紫を見て少しやりすぎたかと苦笑する。

「でも、いつもそれをしているのは、紫殿だ。いつもこっちがドキドキする、だから、今日はお返しでござる。」


くすりと笑いながら、紫を見る。


「……紫殿?」

「………」

「紫殿…」

「…………」


ぷいっと横を向いたままの紫に、少しだけ、ため息混じりにスッと五右エ門は手を差し出す。


「ほら」

「……!」

「…立てますか?」


紫は、その五右エ門から差し出された手に自分の手を置く。

細く見えても力強い、五右エ門の腕が紫を立たせる。


…どうせ、すぐに手を離すんでしょう?


そんな紫の少し寂しそうな瞳が五右エ門の瞳とかちりと合う。

五右エ門は少し、頬を赤くさせながら、

「…帰ろうか?」


目を細め、ふわりと笑う。


そのまま、紫の手を引いて歩き出す。


「あ……」


力強く握られた大きな手は、しっかりと紫の小さな手を掴んで、引っ張っていく。


見ると、顔は見れないけど、やっぱり耳まで真っ赤になった五右エ門は、スタスタと前を向いて歩いていく。


そんな五右エ門に、うれしそうに顔がほころぶ紫。


「いつもと、反対ですね。」


いつもは紫が手をつないで引っ張って歩いてるのに、

手を繋ぐといっても、なんだかいつもと違う感じが妙に嬉しくて、なんだかこっちまで少し照れてくる。




いつまでも、離さないでね。


私は、どこまでもあなたに着いて行くから、


だから、


この手をしっかり繋いでいてね。


また、こうやってお散歩に引っ張って行ってね…。



二人の通って行った後を柔らかい春の風が吹き抜けていった。






てへ。すんません、ドリームですな。。。
ところで、私はゴエさんの言葉使いがよく分かっておりません。(おい!)
もしかしたらかなり変なしゃべりをしているかもしれませんが、すんません。

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